日本語入力をSKK+AZIKに変えた

ふと思いたって、日本語入力環境を変えてみた。

SKKという入力方式だ。SKKは、単語単位で変換する方式だ。これに対して、普通使うものは、連文節変換と呼ばれる。連文節変換は単語の区切りをシステムが自動で判定して送り仮名等も含めてまとめて変換してくれる。これに対してSKKは、自分で文節の区切りを指定しながら入力していく。たとえばこんな感じだ。「Hutuu TukaU monoha, Renbunsetu Henkan to YoBareru.」と入力していくと、「普通使うものは、連文節変換と呼ばれる。」と変換される。といっても、スペースのたびに変換されるので、連文節変換のように一気に変換されるわけではない。

一見めんどうに見えるが、文節区切りを自分で指定するので、誤変換がほとんどない。そのため、むしろ入力は早いらしい。

これに以前から使っているAZIKという方式を組み合わせて使うことにした。

AZIKは、「一般のローマ字入力のキー配列をそのままに、日本語によく出てくる文字列(読み)を2~3ストロークで打てるようにし」たものだ。 (出所:「AZIK総合解説書」、http://hp.vector.co.jp/authors/VA002116/azik/azikinfo.htm )

先の「普通使うものは、連文節変換と呼ばれる。」なら、「Huth TukaUnoha@ Rdbjsetu Hdkz to YoBareruq」となる。 通常のローマ字入力なら、「hutuutukawarerunoha,renbunsetuhenkantoyobareru.」だ。キーの数が42文字から47文字へと少しだけ減った。スペースをのぞけば、37文字だ。

SKK+AZIKは、誤変換による時間のロスと打鍵数の削減により、入力の効率化をはかる。 昔の連文節変換と比べると、今のものは相当進化しているので、その恩恵を受けたい気もする。 けれども、やっぱり単語変換のほうが早いということなのかもしれない。 なんというか、思考の邪魔をしない。

しばらくSKKを使って感じるのは、連文節変換で一発で変換が決まるときは良いのだが、文の真ん中ぐらいの単語が誤変換だと、その時点で思考がとぎれる印象がある。 誤変換が起こったら、その場で修正することができれば、思考がとぎれにくい。

なぜ日本語入力にこだわるのか

入力方式の話をする前に、そもそも、なぜ日本語入力の方式にこだわるのか話しておきたい。 たいていの人は、「普通のローマ字入力+連文節変換でええやん」と思うだろう。ちょっとこだわる人なら、カナ入力というかもしれない。 一般のローマ字入力はほぼすべての入力に二文字以上の入力が必要なので、文章をたくさん打つとキーを打つ回数が増えてしまうという問題がある。カナ入力はたぶんいい。が、キーボードを4段使うのでちょっと疲れそうだ。

キーを押す回数が増えると、腱鞘炎になって手首が痛くなってしまう人も多い。僕も手首が弱いのか、腱鞘炎気味だ。

これを解決する方式として、よく使うキーを一回で打てるようにした親指シフトという方式がある。こちらは慣れるととても楽なのだが、難点として使える環境が限定される。 なので、普段使っていない環境ではローマ字入力することになるのだが、これがつらい。あまりにも入力方法が違うので、まともに入力できない。

これに対してAZIKは、ローマ字を拡張したものだから、普通のキーボードでもそこまで苦労しない。

設定方法

僕は普段、WindowsとMacを使い、EditorにはEmacsを使っている。日本語入力方式を変えるなら、この3つの環境で同じ環境を作る必要がある。

以下、それぞれの環境の設定方法である。

AZIKの修正

僕はAZIKをちょっとだけカスタマイズして使っている。 qを。に、@を、にしている。AZIKで@は、カタカナ入力への切り替えに使われているので、カタカナ入力用のキーは別に用意する必要がある。

この点はちょっとだけ苦労したけれど、いちおう使えるようになった。

AZIKは入力のストレスが少ないように考えられていると思うけれど、「q」に「ん」を割りあてているのはちょっと解せない。ついでに、「。」と「、」は標準の位置にある。この二つはよく使うので、使いやすい位置に変えておきたいものだ。

Windows

いくつかオプションがあるようだが、ここはCorvusSKKを少しカスタマイズして使用した。日本語SKK FEPはWebサイトに独特の癖があってちょっと好きだったが、独自設定を追加する方法が分からなくて使うのをやめた。 ついでに、僕の環境では設定ファイルの.jsファイルを開くときにIEが動いてしまうのも嫌だった。

標準のファイルをインストールしたら、ファイルの公開サイトから、ソースファイルをダウンロードしてくる。 そして、config-azik.xmlのようなファイルを見つけてきて、これをconfig.xmlに書き替え、$home/AppData/Roaming/CorvusSKK/config.xmlと置きかえる。

設定メニューで設定変更ができる。「。」と「、」を変更した。 カタカナへの変更を設定したかったのだが、@の横の[はなぜか認識しないので、仕方なく、Shift+@の`を使うことにした。 ちなみに、上記のサンプルでは、この変更を反映した例を使っている。

Mac

AquaSKKを使う。

こちらはまだ設定していないので、いずれ追記する予定。

Emacs

ddskkを使う。

~/.skkに設定を記入できる。 当初はコード(skk-azik.el)を直接変更したが、それはできればやらない方がいい。今後を考えて、設定ファイルで設定することにした。

以下を~/.skkに記入する。

setqの方はカタカナ入力を「[」でトグルするための設定。本来はキーボードの種類によって変わるのだが、当面は日本語キーボードしか使わないので、これで十分。

(defvar skk-azik-original-rule-list
  '(("q" nil ("。" . "。"))
    ("@" nil ("、" . "、"))))
(add-to-list 'skk-rom-kana-rule-list skk-azik-original-rule-list)
(setq skk-azik-keyboard-specific-additional-rom-kana-rule-list
	    '(("[" nil skk-toggle-kana)
	      ("x[" nil skk-today)
	      ("`" nil skk-set-henkan-point-subr)
	      (":" nil "ー"))))

と思ったら、うまく反映されない。

いろいろ調べてみると、上記は間違いで、ローマ字テーブルの変更は以下が正解らしい。カタカナへの変換もこれで問題ない。 それでも、wslのemacsはうまく動くけど、Macのemacsでは、@が入力されてしまう。なんでかな。 (「skk-vars.el にハッケーン.」出所:「かな入力時のローマ字変換にルール追加. - とりあえず暇だったし何となくはじめたブログ」、https://khiker.hatenablog.jp/entry/20070120/emacs_skk )

(setq skk-rom-kana-rule-list
  '(("q" nil ("。" . "。"))
    ("@" nil ("、" . "、"))
    ("[" nil skk-toggle-characters))
    )

ddskkは、情報があまりなくて、どうすればいいのか分からないことがけっこうある。 でも、少しつっこんで検索すれば、情報をなんとかみつけることができる。

だけれど、検索をがんばるよりも、ソースを読んだほうがよいようだ。 僕も今回ちょっと読んでみた。僕みたいにemacs Lispをあまり読めない人間でも、コメントを追いかければかなりのことがわかった。

書きながら、ふと気になったのでinfoを読んでみた。こちらもすごくよくできている。とても分かりやすい。まずはこっちを読むべきだ。ある程度のカスタマイズはskk-customizeでもできる。

SKK+AZIKの使い勝手

この文章で使い勝手をテストしているのだが、けっこうすぐに慣れてきた。

思考のスピードで、という表現をする人がいるが、そのとおりかもしれない。親指シフトも捨てがたいけれど、なかなか気に入った。

これで入力方式をめぐる旅は終わりかなあと思うのだけれど、実はこの先に、ACT(AZIK on Dovorak)という高い山がそびえている。ここには手を出す気はないのだけれど、もしかすると、次のエントリーあたりで手を出してしまっているかもしれない。

さて、編集後記がてら、これまでの日本語入力遍歴を書いておこう。

まずは、かな入力。これは小学校6年生のときに覚えた。というか、ローマ字入力の存在を知らなかったので、キーボード上の文字を拾っただけという感じだ。

中学になって、ローマ字入力の存在を知り、そちらに移行。

大学1年生になって、父のワープロ専用器のおまけでついてきたタイピング練習ソフトを使い、タッチタイピングを覚えた。 実はこの頃まで、日本語をまともに入力する必要がなくて、タッチタイピングの必要すらなかった。 レポートは必ず手書きという時代だ。

30少し前、親指シフトの存在を知り、いろいろ調べはじめた。このときはふーんと思った程度で移行はしなかった。たぶん、2004年頃だと思うが、ふとしたことから下駄配列のことを知り、「新下駄配列」をはじめた。

2ー3年使ったと思うが、マシンの変更を機に親指シフトに変えた。 2015年頃、AZIKの存在を知り、移行した。変換はGloogle日本語入力だ。

基本的にこれで快適なのだが、なんとなくwsl上のEmacsとの相性が悪く、もういっそSKKにするかあと思って現在に至る。 2015年頃からAZIKを使っていたので、移行はスムースなように思える。

もう一点、SKKにしたいなと思う理由がある。 それは、タブレットでAZIKが使いたいからだ。

Androidにしろ、iOSにしろローマ字入力のカスタマイズはなかなか難しい。 でも、タブレットで仕事したいこともやはりある。そんな時にEmacsが使えればSKKは確実に使えるのでAZIKが使えるではないか! しかも、両者にはUNIXライクというかLinuxが使える環境がある。 これに外部キーボードをつなげれば、僕の場合、ほとんどの仕事ができてしまいそうだ。

Androidはtermux、iOSはiSH.app。ここにemacs+skk、git、Rが入ればほとんど問題なく仕事ができる。

いつのまにかタブレットの性能が上がってきて、そういう夢が現実になってきた。

あるいは、ターミナルだけ使えるようにして、クラウドに仕事用のサーバを作ってしまってもいいのかも。

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